【正しく怖がる】

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[4月に発送した便りです]
 コロナ・ウイルスについて、「正しく怖がりましょう」とよく言われます。「正しく」と言われても、困ってしまいます。行儀よく座って怖がればいいというのではありません。
 「仕組みを知って、何に注意したらいいかを知りましょう。相手が見えないものなので、危険な可能性があることは何か、直感を働かせて、効果がある行動をできるようにしましょう」ということです。

 「正しく怖がる」には、理科や数学の知識や能力が必要です。正確には、そういった知識も大事だし、誰かが話したこと、書いてあることが嘘か本当か、今必要か必要でないか、見分ける能力のことです。身についていると直感でわかるようになります。

 これは、『科学リテラシー(科学的な考え方の常識)』の一部です。
 もうちょっと別の言い方をすると、

「数学や理科の知識をベースに科学的に考えることができて、ニュースや噂話から本当のことを見つけ出す能力。『正しく怖がる』ために必要な能力」
「『自然の常識』を知っていて、自然な、常識的な、考え方ができること」

 もともとは、「義務教育の小中学校ですべてを勉強したら、身についている」ことが期待されているものです。先生は知識を教えようとしますが、「考え方」は「考える方法の型を身につけること」なので、車の両輪の半分が足りません。この違いもあり、なかなか生徒に身につけてもらうことはできません。
 ロボプロに来ている人たちは一歩先に進んでいます。学校で数学や理科の内容を理解したり、ロボプロのテキストから古田先生が伝えたいことをつかみ取り、プログラミングを順番に考えることを続けると、だんだんと身につけられます。
 これは、「友達関係の中で空気を読む」「先生に怒られない条件を探す」などといった精神的に疲れることじゃなく、1回身につけられれば一生使えるものです。もっとも、科学研究は進んでいますので、常に新しい知識にしないといけないのですが。

 コロナ・ウイルス感染拡大防止のために休校になっている学校が多く、また外出自粛のレベルが一段と高まってきました。
 コロナ・ウイルスには、次のような研究結果が報告されています。
 ・コロナ・ウイルスを広めるのは、感染した人の中の2割
 ・感染して発症する直前に一番感染力が高い

 科学リテラシーを持ってこれらの情報を知ると、何が怖いのかわかり、「自分のこと」として考えられ、「外出自粛」の意味がよくわかってきます。

 「何したらいいの?」「何したらあかんの?」「見つからんかったらいいやん」などと指示を待って、理解しないでそのまま動くのじゃなくて、ある程度理解して「これはヤバそうだ」と感じられるようになってほしいのです。

 科学リテラシーを身につけるということは、頭の体操にもなるので、学校に行けない時期の「自分で学ぶ」テーマとして取り組んではいかがでしょうか?
 学校の教科書にも書いてあるので、調べてみてください。教科書に無かったら百科事典。百科事典に無かったら、インターネットを調べてください。
 その際、インターネットの情報を100%信じてはいけません。20か所くらい見比べて、「科学リテラシー」を感じられるものを選び出しましょう。これもまた、「インターネット・リテラシー」といいます。

 科学リテラシーは、『自然の常識』です。知りましょう。例を挙げます。

●1.70%アルコール消毒液は、その液体の中のアルコールの重さが70%。科学の世界では、重さで割合を量る。

●2.「70%アルコール消毒液」と言った時、体積で書いてあるものもある。科学的には重量なのになぜ体積で書くのか?

●3.「70%アルコール消毒液」は、体積でいうと、何%か?気温25度、1気圧だとします。

●4.1日で水面を2倍に広がる水草がある。池一面に水草が広がったのが30日目だとしたら、半分なのは何日目か?(池の前に住んでいるとして、変化の様子を想像してみよう)

●5.原発では、原子核が壊れる時に出る熱で水を加熱して発電しています。入れた原子核の数が半分になるのが「半減期」。原子核の燃料を追加しないと増えることはない。

●6.原子核の半減期は、数が半分になる時間のことを言うだけなので、0になることはない。

●7.壊れて放射能が出る原子核崩壊が0になることがないのであれば、とても危険なことと感じる。だが実際には、人間にとって危険のあるレベル、大丈夫なレベルの境目がある。

●8.100m走で、タイムは人によってばらばら。多くの人を測定して、横軸にタイム、縦軸に人数をとったグラフを書くと、一つのピークの山形になる。

●9.この山形は、どんなことにも当てはまる。水草の増え方も、原子核の壊れ方も、同じようなばらつきがある。

●10.金属についたコロナ・ウイルスは72時間生きているというが、全部のウイルスが72時間生きていて、その時間になったらタイマーで測ったように一斉に死んでしまうということではない。数が1/100になるまで数時間という。生存時間にばらつきがある。72時間以上生きているウイルスもいる。

●11.コロナ・ウイルスの死滅の仕方も、温度や湿度、光で変わってくる。また、ウイルスは変質しやすく、変質したらウイルスが今以上に長生きになるかもしれない。

●12.コロナ・ウイルス感染者数の変化をグラフにするときは、縦軸の目盛りを感染者数そのまま記すのではなくて、1マス上に上がるたびに、目盛りを1→10→100→1,000 とすると、傾向がわかりやすい。

 これらは、学校の数学や理科で勉強することばかりです。研究者は、この法則を見つけ出そうとします。法則は、毎回、いつでも、誰でも同じ結果になるものです。
 研究の結果、答えが決まっていることもありますし、コロナ・ウイルスなどのように「変質していくのが決まっている」のもあります。
 このように、法則があるのを前提とすること、パターンは似ているけれど、それが変わっていくことがある、と理解して事実を受け入れていくこと、その両方が「科学リテラシー」です。

 学校の勉強は、こういったことがコンパクトに上手にまとまっているから、いいんですよ。勉強して損はありません。
 科学リテラシーがないと、「正解がどこかに書かれていないか探す」「相手から聴き出そうとする」「相手に合わせてしまう」「情報や噂話、悪口に振り回されてしまう」ことになります。

 噂話をいくら集めても、科学的なことはわかりません。本当のことは、それを調べた人しか知りません。本当の元のデータを調べることを「1次情報を集める」といいます。
 「正解を教えてもらう」ことを続けていると、それが嘘だったとしても自分の科学リテラシーが反応しなくなります。科学リテラシーを持っていて、自分で考える習慣あると、同じ「1次情報」に触れたら、似た結論になります。違いは、それまでの経験の違いによります。自分の科学リテラシーを高めて、自分として科学的な結論を出せるようになってほしいのです。

 最近、ロボプロの授業中によく言っている言葉があります。
 「ものごとを順番に考えよう」
 「パターンを見つけよう」
 「プログラムを書き換えるなら、1か所ずつやってどう変わるか見たほうがいいよ」
 「1ずつ変えるか、10ずつ変えるか、100ずつ変えるか、ここの数字はいつもどれくらいの数字になる?数字の桁の感覚をつかもう」

 ロボプロで出てくる言葉や考え方は、大学進学時のいわゆる「理系」向けですが、数学は経済学や心理学でも必要だし、「科学リテラシー」は理系も文系も同じく必要です。ともに『科学』ですから。

 今休校になっています。もう少ししたらゴールデンウィークでもあります。
 「科学リテラシー」を自在に使えるようになれることを夢見て、自分が一番勉強しやすいものを使って取り組んでもらえたら、と願います。
 それは、学校の教科書でも、ロボプロのテキストでも、そのほかでもかまいません。

 これが勉強する意味です。
 今は、外出自粛が求められていて、勉強するいい機会です。
 皆さんを応援しています。
(学びラボ 若狭 喜弘)

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