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【将来やりたいこととロボット教室】

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[2月に発送した便りです]

「ロボットやプログラミングなら自分にできそうな気がする。おもしろそう」
「思い通りに、ロボットを動かせるようになりたい」

と、はじめたころの自分を思い出しましょう。
そして、何を経験してきたか、いま何をどれだけできるようになったか、指折り数えて自信を持ちましょう。

【将来やりたいこととロボット教室】

 「ロボットとは、自分(人間)が考えた動きを上手によい加減で動くようにプログラミングした機械」です。

 だから、プログラミングの「正解」は、自分が決めたらいいのです。

[探求する人と自分が何をやったらいいか聞く人]
 学びラボ ロボット教室はロボット教室だから、もちろんロボットを作る技術や考え方を身につけてほしいと考えています。でも、「やること」「やったらいいこと」を指示されることに慣れていると、すべてに「次は何をやったらいいですか?」と言いがちで、「遊ばせてもらうこと」を「楽しむ」になります。少なくともうちのロボット教室では、「ロボット作りの考え方」に沿ったテキストで経験すること、学校とは違う考え方の「学ぶ」に触れることで、指示される世界とは違う世界と感じてもらっているはずです。

 今回のテーマは「将来を考える」です。
 学びラボ ロボット教室に来ている人たちは、進学先については考えているだろうけれど、将来やりたいことはおぼろげなことでしょう。
 もちろん、ロボット教室でやっていることを「おもしろい。これをこう変えたらどうなるかな?」と、いつでも探求している人は探求し続けてください。家族のみんなからも応援されるし、私も応援します。力を貸してほしいことがあれば何でも相談してください。必ず力になります。そして、生まれたときから人生が決まっていたかのように研究者になります。そして、将来やりたいことを問われて、「脳のことを知りたいなあ」などと言います。

 ほかのタイプの人もいます。成績が良い人も含めて人数が多いように感じます。「理解できた。で、次は何をやったらいいですか?」よく聞くセリフです。「ヒマ」というのもよく言います。将来を問われたら「ロボットを作る人」と答えるけれど、「で、何をやったらいいですか?」と逆に質問して来ます。それに対して本当に必要なこと、最低限やらなきゃいけないことを伝えても、簡単にできることだけやって大変そうなことをやらないといった選別をします。やったことについても、「終わらせる」ことがゴールになっているので、もっといい方法を探求するなどはしません。

 これら2つのタイプの人を比べて、どこが違うでしょうか?もしかしたら、後者(やることを聞く人)が、前者(探求する人)よりも、最初は学力(学校の点数)が高いかもしれません。前者は、先生やクラスメイトから「みんなと一緒に行動できない人」と思われているかもしれません。
 では、「ロボットを開発する人」になっている可能性が高いのはどちらでしょうか?

 おそらく前者でしょう。前者が「ロボットを開発する人」になって、後者はロボット開発する人の作業手伝いする人か、ドローン操縦者として農薬散布や橋の点検作業など現場で活躍する人、「ロボット教室に行ったことがあったなあ」と懐かしむだけの人になるでしょう。前者の人もいろいろな偶然や予想していなかったことで、ロボット開発とは全く違う仕事の人になるかもしれません。子供のころになりたかった職業になっている大人は、ほんのわずかです。どれも自分の選択の結果なので、正しい/間違い、成功/失敗はありません。それに、どのような経験もいつか役立つ時が来ます。このことは覚えておいてください。
 でも、できることならば、せっかくロボット教室に通ってきているので、ロボットを使って「考える」「やってみる」練習をいっぱいやってほしいと願っています。
 「これからも、一所懸命考えて探求してください」と書いて終わってもいいのですが、それだと学校から集団で行く職業体験や大人からの「将来何になりたいの?」という質問と同じで、あまりに中途半端なのでもう少し先まで進みます。

[普通に答えたら]
 「将来何になりたいの?」と問われたとき、やりたいことがあっても、それまで考えたことがなくても、相手が理解できて、納得してもらいやすく、笑われない職業を答えることでしょう。もしくは、テレビなどで見た有名な人の職業を答えるかもしれません。たとえば、YouTuber、アイドル、イーロンマスクさんなど。
 それは仕方ありません。10代までだと自分が出会った人の種類が限られているし、有名な人の収入はけた違いなので、あこがれるのは当然です。

 発想の練習です。大人になって会社に入ってお菓子の新製品を開発したとします。いくらくらいが自分の取り分として適切でしょうか?スーパーで100円のお菓子だったら、いくらほどでしょうか?お客さんとしては安くしてほしいし、作った人としては高くしたいですよね。原価を計算してやり取りの結果、値段が決まっていることを知るのも、「将来何になりたいか?」を考えるときに必要です。
 「ロボットを開発する人になる」ためにはこれらのことは考えなくてもいいかもしれませんが、開発中は同様に「使う人の立場になって考える」のが必要です。
 違う視点を追加します。家族との会話で「家業の○○を継いでくれ」と言われて、「自分がそれを背負わなければいけない」「そんなことをしたくない(反発心)」などと思いこんだり、家族の誰かの考え方を自分の判断の仕方や「正しい/間違っている」の基準に刷り込んで、考え方の幅が狭められてることもあります。たとえば、芸能界や飲食業界に入ることを下に見る見方がすりこまれていて、自分がやりたいことを封印してしまうこともあります。
 こんなことでは、自分がやりたいことを自分基準で選んだり、冷静に考える機会もないし、誰かに話しながら深く考えることはできません。

[やりたいこと、できること、やるべきこと]
 もう一つ別の視点もあります。(右図を参照)
 「やりたいこと」を考えるには、「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」が絡んできます。「やりたいこと」の話をしているのに、「できること」や「やるべきこと」で頭がいっぱいになる人は、大人も子供も大勢います。話が混乱しますし、その結果よくある話として、「だから、『やりたいこと』をできない」と、「やりたいこと」を考えるのをやめてしまうこともあります。
 本来「やりたいこと」は、いつでも考えているものだし、関係しそうな情報を収集しているものです。何より、自分の力を一番発揮するのは「やりたいこと」をやっているときです。最も輝いています。なおそのためには、「虫歯を直して、『痛い』と意識を持っていかれないようにする」など、自分のコンディションを整えるのが大切ですが、詳しくは別の機会に。

 ことばの意味を確認します。
 「やりたいこと」:心の動きなので、理由を説明できないことが多い。到達したらそれで終わりで遊んでいたらいいものではなく、たとえば「ロボットを探求し続けている」など。終わりは無い。「収入が多いから」といった理由の場合もある。
 「できること」:今の自分ができること、技術を持っていること。「やりたいこと」のレベルで使えたら、完璧でなくてもよい。「面倒に感じないこと」という場合もある。
 「やるべきこと」:その職業に必要な国家資格に合格すること、その職業をやるために必要な運転免許を取ったりパソコンの使い方を身につけることなど必須のこと。研究のために、研究費、生活費を稼ぐこともここに含まれる。子供のころから家業を継ぐように言われ続けることもある。他人から根拠の十分な説明なしに「そのやりたいことのためには、○○をやるべき」と言われる内容もある。背負い込んで責任感から「やりたいこと」と思い込んでいる場合もある。ギブ・アンド・テイクでほかの人に代わってやってもらってもいいこともあるので、「自分がやるべきことは何か」を十分に考える必要がある。

 ことばに多面性があるので、こっちの話をしていたと思ったらあっちだったということがあります。3つのことばも、前半①、後半②のどちらの意味でも使われます。ここでは、前半①に書いていることを基本とします。

[レベルを上げるときのやりたいこと、できること、やるべきこと]
 同じことばを別の視点で使うこともあります。(右図を参照)
 「やりたいことをできる最低レベル」:たとえば「ロボットを探求するのに必要な最低レベル」の知識や技術、自分のメンタルや体調、環境など。やりたいことをやるには、ここからスタート。
 「今できるレベル」:自分をごまかしても仕方ないので、事実を客観的に受け入れる。レベルを上げる努力をしたらよいだけ。
 「やるべきこと」:少なくとも最低レベルまでは上げる必要がある。けれど、ほかの人に任せてもよい。

 以上が、「やりたいこと」を「やる」ために、自分が「やるべきこと」でした。

[将来やりたいこととロボット教室]
 今回のコラムは、図書館で出会った本の影響を受けています。
キャリア教育のウソ, 児美川孝一郎, 2013, ちくまプリマ―新書
https://amzn.to/3LMABpO

 ロボット教室でキャリア教育をしようとまでは思っていませんでしたが、私がロボット教室で生徒のみんなに伝えたいと思っていたことはキャリア教育だったと気づきました。
 ロボット教室は卒業後何歳になっても使える「学び方を身につける」場所です。内容も道具も部屋の雰囲気もほかのメンバーも、ちょうどいい環境だと自負しています。その分、考えるのをやめたり、手を抜くことも自在で、「学びの中で遊ぶ」意識が無いと時間が無駄になってしまいます。キャリア教育とは「いつまでも学び続けたい、探求し続けたいと思うものを見つける一つの機会」なので、「合う人にはこれ以上の環境は無い」でしょう。もっと活用してもらえたらと考えています。
 どんな小さなきっかけでもご縁なので、今はロボット教室に所属して、テキストを読み進めてロボットを作り、考えていく経験をするだけでも十分です。「テキストに書いてあったことを使って少しだけ遊んでみる」ができれば大丈夫です。遊びの幅を広げていけばいいだけです。それが、「学ぶ」です。

 わかってもらいにくいことですが、先生から「知識を教えてもらう」ことが「学ぶ」ではありません。ロボット教室で、ロボットの作り方を知識として学んで、何になるでしょうか?ロボット工場で組み立てる人になるための研修であれば、それでよいのですが。2つ目の図の「やるべきこと・・・ほかの人に任せてもいい」の「ほかの人」として先生を使うのであれば、情報を知りたいだけですので、iPhoneのsiri、AndroidのGoogleアシスタントに任せた方がいいです。同じことを聞くのが2回目以降だったら、それで思い出せるでしょう。知識や情報だったら、本やインターネット上にとてつもない量が公開されています。
 だから、先生から「知識を教えてもらう」ことが「学ぶ」ではありません。今の自分の理解でいいのかチェックしてもらうためや、ディスカッションして理解を深めるのが「学ぶ」です。アウトプットのときに先生がいる意味が出てくるのです。

 先ほどにも書きましたが、「何になりたい?」と大人は気楽に聞きますが、答えるのは大変難しいものです。答えを聞いたら、「あれと、これと、それをしないとな。で、それはどれくらいできるの?もっと勉強しないとな」と、大人が勝手に話を進め、子供がやりたいことの話が、子供自身がこれからクリアしなければいけない評価項目に変わりがちです。うまくいったらいいけれど、上達しなかったり、やっていく中で適性がないと感じたり、興味がなくなったときにどう言われるか、と考えると憂鬱になります。大人にとっては、酒の肴、夕飯のおかずの一品くらいで、その時の話のネタになったらいいくらいの位置づけなのですが。
 それでも、子供が「やりたいこと」を考え、行動をはじめることは、結果がどうなっても大切なことです。子供にとってはひどい扱いですが、大人が関心を持って聞くことからはじまるかもしれません。自分自身に問いかけるきっかけは多い方がいいですから。

 「やりたいことを実現するために、やるべきこと」を考えるときに大人から言われがちなのが、「目標を決めて、努力して、達成する」です。大人がやっているか、できているかはわかりませんが、大人もほかの人から言われた経験があり、周りから見て結果がわかりやすいからでしょう。「目標を決めて、努力して、達成する」が適しているのは、入試などテストです。ほかには数年間で達成できる約束くらいです。第一に入試合格は、ゴールではなくスタートです。達成すると力尽きてしまい、その先に進む気にならなくなることがあるようです。「やりたいこと」はどこかに行ってしまっています。それでは達成した意味がありません。
 一方、「やりたいこと」にピタッとはまれば本人が努力を努力と思わずにこだわり続け、ひらめきが起こり、想定以上の成果が出るかもしれません。
 これについても、自分がどちらのタイプか知って、自分に合った方法で取り組むことが大事なのです。

 以上、学校や家庭では言われにくい「やりたいこと」の話でした。
 ロボット教室では、「自分に合う学び方を探して、身につける経験と練習」をしてもらいたいです。そして、思春期であっても、自分の思いや状況をことばにして伝えてほしいなあと思います。必ずそれは「やりたいこと」をやるためによい結果を導きます。

(学びラボ 若狭 喜弘)

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