[2月に発送した便りです]
学びラボ ロボット教室の生徒はみんな知っているけれど、はじめたての人や来ていない人が知らないことは、
●「学ぶ」とは、教えてもらうことではなくて、自分から理解しに行くこと。
●ロボットを作るときにやっていること。
①テキストにはロボット作りのすべてが書いてあるのでじっくり読む。
②順番に考えて、一つ一つ試して、自分の知識や能力を積み重ねていく。ロボットの動きの順番も考える。「適当に」では作れない。
③式を計算することが苦手でも逃げない。国語、算数・数学、物理(理科)が必要。
④簡単にできることだけをやっていないで、少し難しそう・面倒そうに見えて避けていたことにチャレンジする。楽しむ。
【4つのなんで?】
[ロボット教室で見つけた『4つのなぜ』]
「ティンバーゲンの4つのなぜ」をまずはロボット教室のあれこれに当てはめて考えます。
4つの言葉の意味など詳細は、あとに書きます。
●1年目秋のリンクロボット
①メカニズム :脚はどういう仕組みで動いている?
②機能 :脚があの形になっている理由や利点は?
③発達 :脚はどのように組み立てていく?
④系統進化 :脚の本数が少なかったらどんな動きになる?もっと脚の本数を増やすとしたら、何をよくするため?
●1年目夏の超音波距離センサー
①メカニズム :センサーはどんな仕組みで動いている?設置の時に注意することは?
②機能 :超音波を使う理由は?2つの出っ張りの高さと距離の意味は?
③発達 :センサーを使うためには、どんな回路とプログラムが必要か?
④系統進化 :距離を測るほかの方法は?センサーが今の形、大きさ、性能になるまではどのようなことがあった?
●リモコン操縦
①メカニズム :どんなパーツを使ってどのように接続したらリモコン操縦できる?
②機能 :無線を使う理由は?どれくらい離れたら操縦できなくなる?
③発達 :リモコンを使うためには、どんな回路とプログラムが必要か?
④系統進化 :リモコン操縦するのはなぜ?ほかの方法は?昔は、同じ型のほかのロボットを勝手に操縦できたのじゃないかな?
●うまく動かないとき、暴走するとき
①メカニズム :組み立て、配線、プログラムはテキスト通りか?
②機能 :問題を起こしているかもしれないチェックする個所は、組み立て、配線、プログラムの、どの系統か?どれのどこが理由で不具合を起こしているか?
③発達 :何をやった時から問題が起きているか?
④系統進化 :自分の経験、ほかの人の体験で、似たことはなかったか?その時に何をしたか?
●ロボット教室で学ぶ
①メカニズム :テキスト通りに組み立てる。設問に答える。使い方を知る。
②機能 :そのパーツ、そのプログラムの理由や目的や工夫してあることを知る。
③発達 :ロボット教室で今まで学んだことを思い出す。組み合わせて使う。
④系統進化 :目の前のロボットをバージョンアップするなら、どの機能を強化するか?今まで学んだことを組み合わせて別のロボットを作れないか?家庭、学校、部活、塾、日常で、ロボット教室で知った技術や道具を使えないか?ロボット教室で身につけた学び方、考え方を「夢の実現」に活かせないか?
●勉強する
①メカニズム :ゴールを決める。今のレベルを知る。アップさせる差を知る。自分にとって一番身につく勉強法をする。
②機能 :勉強する理由。そのゴールの理由。自分にとってそのゴールが絶対に必要な理由。
③発達 :これまで努力したこと、どのようにレベルアップしてきたかを思い出す。自分にとって有効な方法を思い出す。得意なことを思い出し、不得意でもやらないといけない必要なことを知る。
④系統進化 :今までレベルアップできたのはなぜか?変化の時にどのような気持ち、体調だったか思い出す。今取り組んでいるゴールは、将来やりたい目指していることにふさわしいものか?
どんなテーマでも、「4つのなぜ」を使えば分析できます。
これらを参考に応用編として、モヤモヤ・イライラすることを考えてみよう。
生きていると、モヤモヤ・イライラすることや困りごとが起こります。でもそのモヤモヤ・イライラ、困りごとを分析して見通しが良くなると、やることがはっきりして、やる気も出てきます。
「4つのなぜ」で、モヤモヤ・イライラ、困りごとを分析してみましょう。
ただし、「他人の責任にする」「他人に行動をやらせる」テーマでは効果がありません。客観的に分析した上で、「自分ができること」「自分が行動すること」という視点の言葉を使いましょう。
ぜひ取り組んでください。
[『4つのなぜ』を解説しよう]
前の節は、「ティンバーゲンの4つのなぜ」をロボット教室のあれこれに当てはめて考えたものです。
「ティンバーゲンの4つのなぜ」は、動物学者のニコ・ティンバーゲンが提唱したもので、「生物がある機能をなぜ持つのか?」という疑問を4つに分類したものです。
つまり、なぜそんな形で、なぜその機能があって、なぜそんな行動をするのか?それはいつから?などの疑問に答えを出す研究をしようというものです。
(最後に、参考にしたWebサイトを掲載します)
例えば、「なぜ、ウグイスは鳴くのか?」「なぜ、カラスはハンガーを持っていくのか?」「なぜ、アマガエルは鳴くのか?」「雪に残ったウサギの足跡の形の意味は?」
などの疑問に答えるには、何を説明したら、科学的に世界中の人が納得するように答えたことになるのか、という視点を整理したものです。
一つ目の疑問「なぜ、ウグイスは鳴くのか?」は、「鳴きたいから鳴いている」も答えの一つでしょうけれど、世界の人が科学的に納得してくれません。「当たり前」は、答えではありません。
「科学的に」というのは、「誰もが納得できて、矛盾がなくて、別の地域のウグイスも同じ理由で、すべてがその理由で説明できて、鳴く身体の仕組みを持っていて、進化の結果として鳴くのは矛盾がないか」などに十分な説明になっている、という意味です。
「4つのなぜ」とは、
①メカニズム:どのようなしくみで成立しているのか。(仕組みや使い方)
②機能 :どのような利点/意義があるか。(利点、意義、意味、理由)
③発達 :成長過程でどのように獲得するか。(その個体の生長、変化)
④系統進化 :進化の過程でどのように獲得したか。(進化した変化の理由やきっかけ、目的)
(四谷学院の記事をベースに作成)
これを表の形に整理します。
「今の形(現在)」と「これまでの成長や進化など変化(時間の流れ)」の視点と
「実際の形や動き」と「理由、目的、利点」の視点があります。
動物行動学の話は、それ自体おもしろいから紹介したいのだけれど、「ティンバーゲンの4つのなぜ」が書いてあったのは、大学の研究室のWebサイトではなくて「四谷学院」「ドラゴン桜と学ぶ学習メディア」などのWebサイトです。中学生、高校生の「勉強の仕方」のヒントになるために取り上げていました。
ですので、このコラムでも紹介しました。
[『①操縦のやり方』を知ったら終わりではない]
ロボット教室に来ている人を見ていると、一部の人ですが次のような考えの人がいます。
「『①操縦のやり方』『③組み立て方』を知って、その通りにやって動いたらそれでいい」
「テキストに書いてあるそれっぽいことをやって動いて、遊べたらそれでいい」
その生徒だけが悪いのではなくて、今までの生活や経験のすべてが、家や学校で指示されたり、代わりにやって助けてもらっていて、「学ぶとは、やり方を知ること」「とにかく動いて終わらせたらいい。無罪放免」という発想が身についてしまったように見えます。
「理由、目的、利点」を知って考えるのはおもしろいし、「学ぶ」とはそれをすることだと、チラとでも知ってもらいたいです。
「③作り方を理解して、①使い方をマスターする」のはゴールではなく、スタートです。 今までは、例えばクラスの全員を「できるようにする」としたら先生は、
せめて「作り方を理解して、使い方をマスターする」までは行かせよう、と考えます。誰もが納得するレベルだから。
でも、本当はそこからがスタートなのです。
できる生徒は、早くきれいにそこまでたどり着くから優越感を感じていました。「自己肯定」は大事なので、「ほかの人より先にできた自分」を味わうのは大事です。
けれど、先に行けるのだから、行かないと。それも簡単なテーマの時からやることが大事です。簡単な時からの方が「考え方」がなじんで使えるようになります。
ここまで読んでもらったように、「4つのなぜ?」の視点を知ってその「なぜ」の問いを持ってロボット教室の時間を過ごしたらとても豊かに学べます。その発想を持たない人は形だけ終わらせて、先に先にと進みたがったり、時間の使い方を考えずにリモコンで操縦して延々と遊び続けます。
もちろん、似たように見えるけれど、自分で時間をコントロールしている人はいいのです。1回分のテキストを3回の授業でやることもあるけれど、早く進めるところは2回分を1回の授業で済ませる人もいます。そうやって、自分で考えている人はいいのです。
ロボット教室に来てくれているので、できることなら生徒のみんなに
「●ロボット教室で学ぶ」の全部を味わってもらいたいと願っています。特に
④系統進化:
目の前のロボットをバージョンアップするなら、どの機能を強化するか?
今まで学んだことを組み合わせて別のロボットを作れないか?
家庭、学校、部活、塾、日常で、ロボット教室で知った技術や道具を使えないか?
ロボット教室で身につけた学び方、考え方を「夢の実現」に活かせないか?
の視点で考えられるようになってもらうことは願いです。
まずは、こんな発想もあるんだなあ、と知ってもらいたいです。
私が思う「ロボットで遊ぶ」とは、ここのことです。
もちろん、ある程度①~③の内容を学んで理解してからでないと遊べません。
この「遊ぶ」が、「やりたいことをやる」につながっていきます。
「知って、学んで、理解して、考えて、試作して、完成させる。」
学校の勉強やテストで追い回されていると、このような発想までは来ないかもしれないけれど、これが「学ぶ」「遊ぶ」です。
私から命令してもできるものではありません。学びラボ ロボット教室は、これができる環境にしているつもり。安心して「学んで」「遊んで」欲しいなあ、と願っています。
※参考
●【生物】答案作成がスムーズになる「4つの問い」?ティンバーゲンの4つの問いから考える生物学習のポイント
四谷学院, https://www.yotsuyagakuin.com/b_geneki/nikolaas-tinbergen/
●「ティンバーゲンの4つのなぜ」とは?現役講師がわかりやすく解説!
ドラゴン桜と学ぶ学習メディアStudy-Z, https://study-z.net/100057046
●「動物の行動研究」入門: はじめに
九州大学附属図書館, https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/study_of_animal_behavior
●ティンバーゲンの4つのなぜ
Wikipediaで検索, https://ja.wikipedia.org/wiki/
(学びラボ 若狭 喜弘)
comment closed