[5月に発送した便りです]
学びラボ ロボット教室の生徒はみんな知っているけれど、はじめたての人や来ていない人が知らないことは、
●「学ぶ」とは、教えてもらうことではなくて、自分から理解しに行くこと。
●ロボットを作るときにやっていること。
①テキストにはロボット作りのすべてが書いてあるのでじっくり読む。
②順番に考えて、一つ一つ試して、自分の知識や能力を積み重ねていく。ロボットの動きの順番も考える。「適当に」では作れない。
③式を計算することが苦手でも逃げない。国語、算数・数学、物理(理科)が必要。
④簡単にできることだけをやっていないで、少し難しそう・面倒そうに見えて避けていたことにチャレンジする。楽しむ。
【映画 BLUE GIANT】
映画「BLUE GIANT(ブルージャイアント)」を観ましたか?ぜひ一度ご覧ください。映画中のプロの演奏を十分に体感するために、音響が良い映画館での鑑賞をお勧めします。
何回も観に行った人を知っています。私は2回目に行こうとして、その日は最も近いところが京都でした。都合をつけられず行かなかったので、今のところCDを買って何度も聴いて済ませています。また映画館を探してみます。
原作漫画は、主人公 宮本大(だい)がジャズを好きになり、「世界一のテナーサックスのジャズプレイヤーになる」と決め、毎日とてつもなく練習する日々の「仙台編」からはじまります。プロ奏者を目指していた師匠に音を惚れこまれてしごかれて技術を身につけて上手になり、夢に近づきます。
映画は、「東京編」です。仙台の高校を卒業して東京に出てきます。プロのバンドを組み、最後にバンドを解散して海外へ旅立っていきます。映画は、原作漫画中で演奏されているオリジナル音楽を、読者が実際に体感するためのものといってもいいでしょう。ストーリーはほとんど原作通りに進んでいきますが、ドラマは演奏に関係するところに絞られています。
学びラボ ロボット教室は、音楽教室ではなくロボット教室でした。
でもね。「本当にやりたいことだったら、とことんまでやろうよ」と伝えたくて、映画のほかに原作漫画も含めて、ロボット教室の皆さんにお伝えしたいことを書いていきます。
1.好きなこと、やりたいことは、毎日やり続ける。
漫画の中では主人公は「大(だい)」と呼ばれているので、ここでも大君と呼ぶことにします。
大君は、テナーサックスは大きな音が鳴るので近所に迷惑が掛からないよう、川の堤防で、山のトンネルで、橋の下で、海辺で、師匠の家の練習室で毎日時間があるだけ練習します。
具体的な時間は描いていないですが、部活が終わった夕方から日付が変わる12時過ぎまで毎日吹いています。6~8時間くらいでしょうか。部活がない土日や長期休暇中は、朝から晩まで吹き続けます。真夏の太陽の下でも、雪が降る真冬も変わりません。プロの演奏家も一日中練習しているという話なので、誇張されてはいません。
ただし実際のことで言うと、「練習を休むのも練習」とも言われます。大君くらい練習する人は、プロのトレーナーに相談する方がいいでしょう。一般の多くの人には関係ない話ですが。
2.鳴らしたい音、鳴らしたい音楽のイメージを持つ。
自分がイメージしたことしか実現しません。
毎日長時間練習するのは、大君がジャズが好きで、携帯プレイヤーで聴くその演奏が好きで、それを真似たいと思うから。そして、自分が表現したい音があるから。
自分が音楽にしたいと強く願う「感情」があり、その音楽を演奏して聴かせたいと思うから。
誰かが演奏したジャズだったら、自分も同じように演奏したい。
自分の感情を音にしようとしたら楽器の構造で難しいこともあるけれど、工夫次第で近づける。
まずは、鳴らしたい音、鳴らしたい音楽のイメージを持ち、その音を使ってどんな音楽を創るのか、イメージを持つことが大事です。
3.師匠から上手に教わる。
長時間練習すればいいというものではありません。合理的な練習でないと意味がありません。そのためには合理的に指導してもらえる師匠が必要です。
大君の場合だったら、音の高さ、音色、速さ、正確さ、連続性、タイミングなど、必要な技術と理想のイメージ、音楽で許される範囲と心がけを教えてくれる人です。
そして師匠は、大君が実現したい音楽をきちんと理解して、フィードバックできる人であることが大事です。
練習するのは大君だから、練習の間は任せておいてくれて、次のレッスンでは、できていること、できていないことをズバリと指摘する人が必要です。これをフィードバックと言います。
フィードバックには、「大君が実現したい音楽」が最初に必要です。大君が自分で音をイメージして、教えてもらったことができるようになり、余裕で演奏できるようになるまで練習する必要があります。大君にイメージがないのに、フィードバックはできません。部活でも勉強でも、「自分が実現したいこと」を自分でよく理解して、そのための行動を起こしていることが大事です。
そして、フィードバックはテストの結果じゃないので、大事なのは点数ではなく何をできるようにならないといけないか、です。「自分が実現したいこと」へのフィードバックなので、フィードバックしてもらったことをすぐに練習します。止まりません。
しかし、指導者に「自分が実現したいこと」をきちんと理解してもらうのは今も昔も難しいものです。指導者が実現したい音楽が目標になりがちです。チーム戦の運動部だったら、「チームが勝つこと」です。単純化してしまって、一人一人が実現したいこと、大切にしていることに関心を向けてくれないようです。
4.練習を飽きない。
好きなことをやっていたら飽きないものです。どれだけ今は下手でも練習できるものです。
師匠からフィードバックしてもらったことがなかなかできるようにならなくても、飽きません。
「音の高さ、音色、速さ、正確さ、連続性、タイミングなど必要なこと」を淡々と練習するのもありです。転調が多くて指使いがどんどん変わっていっても、同じリズムでできるのがプロです。だから、必要な練習だと淡々と取り組むのもありです。
飽きないために、「ここまでできた」と達成感を感じるためのスタンプカードなどもありでしょう。
大君は、演奏するのが楽しいので、「お、ここまでできた」というだけで十分で、練習するフレーズを編曲して新しい曲にしていくことでしょう。自分が目指す音楽をどうやって作るか選択を悩むことはあっても、練習を飽きることはないでしょう。
5.「世界一のジャズプレイヤーになる」と声に出して言い続ける。
「世界一のジャズプレイヤー」になりたいから、「なる」と言っています。
でもなかなか言えません。自分に言い聞かせるためにも声に出しましょう。
そして、それはあまりに子供じみているようで恥ずかしいものですが、相談できる人に言いましょう。
本気であれば、自分でもいろいろな工夫をします。自分が本気だったら、相談された人も何らかの協力をしてくれることでしょう。
6.幅広く様々な勉強をする。
「世界一のジャズプレイヤー」になろうとしたら、テナーサックスの練習ばかりしていればいいという訳にはいきません。
大君は高校の定期テストの世界史の勉強をしながら「これも世界一のジャズプレイヤーになるには必要なんだ」とつぶやいています。
冷静に考えてみて、学校で勉強する、国語、数学、理科、社会、英語など、すべて必要ですよね?
世界一のプレイヤーだったら、いろいろな国に入って土地の人と話をして、文化を理解して演奏することになります。学校で勉強する内容は、自分がやりたいことの基礎です。もっと幅広く、深く学ぶ必要があります。
7.手に職をつける。やりたいことのために働く。恥ずかしがらない。
仙台編ではガソリンスタンド・整備工場、東京編では建設・工事現場、飲食店でアルバイトをしていました。
もちろん、音楽演奏だけで収入を得られたらいうことはないですが、生活や演奏のためのお金は必要です。
演奏や練習に支障が出るようであればダメですが、自分が演奏するためにも、お金を稼ぐための技術があるといいですね。海外では、路上パフォーマーで収入を得る方法もあるので、場所によっては演奏だけでもいけるかもしれません。
東京編では、ライブ開催のためにチラシを配っていました。「恥ずかしい」が「実現したいこと」より大きく感じられることがあります。でも大君の場合は、まずはライブにお客さんに来てもらうことの方が大事です。だから、「実現したいこと」のために、恥ずかしいという発想はありませんでした。
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「ここまでやりたいことじゃなかったら、ロボット教室に来る意味がない」とは言いません。これから見つけたらいいのです。順序だてて考える練習にもなりますし。
おそらく、小中学生なら、まだ何一つ、真剣にトコトンまで練習したくなるほど「実現したいこと」には出会っていないでしょうから、見つけるまで興味を持ったことをたくさんやったらいいと思うのです。
そうしたら、「自分がやりたいこと」と「ほかの人より上手なこと」が見えてくるはずです。「ほかの人より上手なこと」より「自分がやりたいこと」が大事なのが実感としてわかるでしょうし、ほかの人と比べることに意味を感じなくなるでしょう。
中学生になると、学校の勉強内容は勉強しないとわからなくなり、テストが頻繁にあり、高校進学を考えなきゃいけなくなります。
そうすると多くの人は、「自分がやりたいこと」ではなくて、その範囲のことしか考えられなくなって、「勉強をさせられている」し、「勉強するのは嫌だ」と感じるようになります。(逆に言えば、面白がれるポイントを見つけて勉強すれば、わかってくるのです。本当に)
高校入試や大学入試がゴールではありません。就職がゴールでもありません。スタートです。
「自分が実現したいことをする」のが仕事だし、生きることです。
中学、高校時代の勉強はこれからの基礎だから必死に勉強して欲しいし、一方では燃え尽きないでいてほしいと願っています。
ロボット教室に来てもらっているから、こういう話に触れられます。
飽きないで来てください。
(学びラボ 若狭 喜弘)
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