【やりぬく力】

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[12月に発送した便りです]

「ロボットやプログラミングなら自分にできそうな気がする。おもしろそう」
「思い通りに、ロボットを動かせるようになりたい」

と、はじめたころの自分を思い出しましょう。
そして、何を経験してきたか、いま何をどれだけできるようになったか、指折り数えて自信を持ちましょう。

【やりぬく力】

 「ロボットとは、自分(人間)が考えた動きを上手によい加減で動くようにプログラミングした機械」です。

 だから、プログラミングの「正解」は、自分が決めたらいいのです。

 もうすぐ新年を迎えます。今、この時点で入試に向かって取り組んでいる人もいます。とてもとても応援しています。
 そういう人たちは目標や夢に向けてすでに走り出しています。
 目標や夢に取り組むときに必要なのは、「やりぬく力」です。

 ある本を読んでいて、「やりぬく力」について書かれている本があることを知りました。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける, 2016, アンジェラ・ダックワース
https://amzn.to/3IVJ7RJ

※インターネット上にも、この本をもとにした記事がたくさんあるので、受け取りやすい内容のものをお読みください。

 本の内容紹介というよりも、学びラボ ロボット教室に来ている生徒の皆さんが役立てられる形にしてお届けします。

[大事なこと]

 知性や学力、能力が、今現在高い人よりも、「やりぬく力」が高い人が目標を達成して成果を上げている。

 最初、自分の方が上手にできたのに、知らないうちに追い越されていたことはありませんか?もちろん、塾や習い事に行って問題の解き方やコツを教えてもらってきているのかもしれません。
 でも大事なのは「問題の解き方やコツ」ではなく、それらを自分で発見する頭の使い方を知ることと、それらを身につけることです。「裏技を知ったら大逆転や」という発想では、いつまで経っても追いつけません。そして、あきらめることになります。
「やりたいこと」は、とにかくやることが楽しく、誰かと比較することはないので大逆転も、裏技もありませんが。
 才能があっても挫折してやめてしまう人がいます。「できる」「簡単そう」で選んでやりはじめても、続かない人が多くいます。一方で、目立った才能がなかった人がコツコツとやり続けて目標を達成して成果を出すこともあります。
 今の「能力」ではありません。目標達成のために今からどう高めていくか、です。
 成果を上げるには、最初の知性、学力、能力はある程度必要ですが、「やりぬく力」の方が重要です。

 日本では、まずやってほしい具体的な行動内容を指示して、「やりぬけよ!」「がんばれよ!」と精神論で応援し、あとは「本人の責任」とすることが多くあります。
 最後は本人の強い気持ちになるのは確かですが、周りの人の「応援の仕方」「見守り方」には、もっと工夫がほしいですね。
 本人にプレッシャーをかけて、うまくいかないときに叱咤しても、成果をあげることはできません。そのやり方は、周りの人の自己満足でしかありません。

 ここでお伝えしたいのは、「やりぬく力」で今すぐに成果を出すことではなく、
 「やりぬく力」を実践してみる体験をし、「やりぬく力」を身につけるための練習をしましょう、ということです。

 人には悪い癖があります。どれだけ「練習だ」と最初に断っても、成果が出始めると欲が出て、「もっともっと」と成果を出すことのみに視点が狭まって、応援している立場の人が相手を追い込んでしまいがちです。
 追い込まれた人は、逃げるか、もしくは潰れます。ほかには、難易度の高い学校への受験でよくあることですが、「合格するまで我慢」して、終わったら何もかもやめてしまいます。合格を目指したのは、やりたいことを入学後にもっとやるためなのに。入学してやりたかったことをもう一度思い出しましょう。
 「やりぬく力」を、使えるように身につけることを一番に考えてください。

[もともとの研究対象]

 「やり抜く力 GRIT(グリット)」を書いたアンジェラ・ダックワースさんは、次のような人たちについて研究しました。書かれているのは、その結果です。

・アメリカ陸軍士官学校の士官候補生のうち、厳しい訓練に耐え切る人と中途退学する人
・単語のスペルの正確さを競う大会「ナショナル・スペリング・ビー」での優勝者
・教育困難なエリアという過酷な現場で働き続けて生徒の学力を伸ばした教師
・企業のトップセールスマン

[「やりぬく力」=GRIT]

 「やりぬく力」=GRIT(グリット)は、英単語の頭文字です。

Guts(ガッツ):度胸。困難に立ち向かう力。
Resilience(レジリエンス):復元力。失敗してもあきらめずに続ける力。
Initiative(イニシアチブ):自発性。自分で目標を決めて取り組む力。
Tenacity(テナシティ):執念。どんなことがあっても最後までやり遂げる力。

[「やりぬく力」を発揮するために:自分編]

 「やりぬく力」を発揮するにも、方法があります。まずは自分編です。

興味があることを、「自分で選んで」取り組む。
②今の力で簡単にできることより、少し難しいことに挑戦する。
③取り組むことは、小さなパーツに分解する。
④小さなパーツの成功体験を積み上げる。
⑤普段より少し楽観的になる。
⑥うまくいかなかったときには、「どうやったらできる?」と考える。
 簡単に「無理」と判断しない。おそらくまだ何も工夫していない。
やめてもよい。ただし、区切りを決めた期間までは続ける。
 自分の中でしっくりいかない、手ごたえがないときは、やめてもよい。何が原因か、何が足りなかったのかなど分析して、自分を理解する。

[「やりぬく力」を発揮するために:周りの人編]

 家族や周りの人が応援するにも、方法があります。周りの人編です。

家族や周りの人も、今の力で簡単にできることより、少し難しいことに挑戦する
 一緒に頑張っている同士で、はげまし合えます。
②本人の今の力で簡単にできることをテーマに選んでいると感じた時には、感じたことをその通り伝える。1つ目の目標を達成したら、次は少し難しいことを挑戦するよう促す。(注意:「目標のためには、ここまでやっておかないといけない」と考えるのは本人がすることです。本人以外は禁止です。)
③折に触れ、本人ががんばっている点(行動や考え方、視点など)を具体的に伝える。
④本人に成果が出たら、一緒に喜ぶ
 でも、誰が見てもわかる結果よりも、「③がんばっている点を伝える」ことの方が大事。結果を見て評価するのは、言う側にとって「確実」で「間違いない」こと。応援している人が、自分を安全な立場に置いて自分を守ろうとしてはいけない。
⑤本人が取り組んだことがうまくいかなかったときには、「どうやったらできそう?」「サポートしてほしいことはある?」と問いかけ、可能性に目を向けさせる。
⑥本人が、今のテーマをやめると決めて伝えられた時には、そのまま受け入れる。がんばった点を具体的に伝える。
 周りの人は、続けるよう促しがちだが、本人は十分に考えて伝えに来ている。そこで「説得しなきゃ」と思わせたら、次の挑戦をしなくなるので、結果的にマイナスとなる。

 本人が「やりたいこと」「やると決め」て、「やりぬく力」を発揮する経験・練習をするのが目的なので、その障害になることは可能な限りなくしましょう。

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 新年になったら、「やりぬく力」を練習するためにも、何か目標を立ててみてはいかがでしょうか?うまくいったら成果も出ます。
 今のロボプロコースで学んでいることでもいいです。ほかのことでもいいです。「周りの人編」にも書きましたが、家族や周りの人も、「普段の自分が簡単にやっていることより少し難しいこと」に挑戦してみてください。

 子供が挑戦していることは、大人とっては経験済みや簡単にできることなので、口や手を出しがちです。「できないこと」が目についてしまうからです。
 子供は「できる」と信じて見守ってもらっているよりも、「何でできないの?」と非難の目で見られていると感じてしまいます。
 なので、周りの大人も同時に何かに挑戦したほうがお互いに幸せです。

 そして注意しないといけないことは、「子供ができて、大人ができないことは放置」してしまいがちなことです。
 内容がわからないとか、高度で理解できないことだとなおさらそうなります。周りの大人が「評価しよう」「教えよう」としているからです。大人、というか社会の「悪い思考の習慣」です。
 だからこそ、よく観察すれば、誰でもできる『折に触れ、本人ががんばっている点(行動や考え方、視点など)を具体的に伝え』ていただきたいのです。
 子供がやっている内容を本気で知りたいときには「教えてもらう」のもありです。ですが、本気でないのはわかるものですし、大人が飽きてきたらマウントを取って終わらせようとしてしまいがちです。
 ですから、「本人ががんばっている点」を伝えるので十分です。信じられないくらい、大きな力になります。

 「やりぬく力」の発揮し方を身につければ、今後さまざまなことを乗り越えていけます。
 そのためにも、新年を迎え、家族、周りの大人も含めて全員で、ぜひ「今の力で簡単にできることより、少し難しいこと」をテーマに決めて挑戦してください。

「やりぬく力」を測定できるWebサイトがあります。(英語です)
Grit Scale
https://angeladuckworth.com/grit-scale/

(学びラボ 若狭 喜弘)

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